02.20
経営者がプレイヤーをやめられない構造
中小企業のための意思決定設計 第3回
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なぜ社長は手を動かしてしまうのか
多くの中小企業で、社長は現場に立ち続けている。
営業も見る。
価格も決める。
時には採用面接にも入る。
理由は非常に単純。
「自分がやった方が早い」
その判断は、短期的には合理的である。
しかし問題はそこではない。
プレイヤーをやっていることではなく、
プレイヤーを“やめられない構造”にある。
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中小企業白書が示す“選択”の差
中小企業庁「2024年版 中小企業白書」では、
経営方針の違いによって利益に明確な差が出ていることが示されている。
新たな需要を獲得する行動をとった企業
・経常利益中央値 40.6%
・損失回避で静観した企業 18.8%
出典:中小企業庁「2024年版 中小企業白書」
ここで重要なのは、
行動の差ではなく、“選択の構造”の差である。
判断が分散できる企業ほど、
攻めの行動が取れる。
判断が集中している企業は、
守りに入りやすい。
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プレイヤー経営の正体
社長が手を動かし続ける会社には、共通点がある。
・価格決定基準が曖昧
・例外処理ルールがない
・改訂、撤退基準がない
つまり、
任せられないのではない。
任せる設計がない。
私が関与した製造業の企業でも、同様だった。
営業責任者はいた。
だが最終的な価格決定は社長。
理由は明確だった。
「基準がないから怖い」
そこで行ったのは、
“粗利率◯%未満は受注しない”という単純な線引きではない。
当たり前に行うべき”粗利率基準を明文化”し
その基準を達成するための改善施策を会社の最前線である営業側に再定義させた。
常に改善と向き合う姿勢は、社長だけではなく、社員全体の意識を持つ必要がある。
・価格再交渉
・仕様見直し
・原価構造の改善検討
結果、
社長が個別案件に入る頻度が半減し、売上機会損失、利益率は改善した。
任せたのではない。
構造を設計した。
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ボトルネックは能力ではない
優秀な経営者ほど、プレイヤーをやめにくい。
なぜなら、
自分が一番できるからだ。
しかし、できることと、やるべきことは違う。
判断が社長に集中する会社では、
・意思決定が遅れる
・幹部が育たない
・組織が拡張しない
図を参照。
図:意思決定構造と組織拡張性(概念比較)
出典:KEYSTONE STRATEGY PARTNER
構造が拡張性を決める。
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任せるとは何か
任せるとは精神論ではない。
「信じる」ことでもない。
任せるとは、
判断基準を設計すること。
具体的には、
・価格の下限基準
・粗利改善責任の所在
・改訂、撤退基準
・例外処理ルール
これが明文化されていない会社では、”任せる”ことは非常に難しい。
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経営者の本来の役割
経営者がやるべきことは3つである。
1)最終判断
2)基準設計
3)評価設計
それ以外は組織に渡す。
プレイヤーをやめるのではない。
プレイヤー頻度を下げる。
経営とは、行動ではなく設計である。
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見解
経営者がプレイヤーをやめられないのは、
覚悟が足りないからではない。
構造がないからである。
任せる勇気ではなく”任せる設計”。
その設計ができたとき、
組織は初めて“拡張可能”になる。
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