02.26
撤退基準を設計できない組織で起きること【第4回】
1|なぜ撤退は議論されにくいのか
新規投資は議論される。
拡大戦略も議論される。
しかし「撤退」の基準は明文化されない。
中小企業白書2024では、
改善が遅れる企業の特徴として、
・不採算事業の見直しの遅れ
・固定費構造の硬直化
が挙げられている。
問題は売上ではなく、判断の遅れである。
2|“様子を見る”文化の構造
撤退基準がない場合、
・「来期まで様子を見る」
・「担当者に任せる」
・「改善が前提だから」
という空気で決まる。
明文化されていない基準は、
感情に左右されやすい。
これは能力ではなく、
設計の欠如である。
3|白書が示す“判断の差”
図1を見てほしい。
【図1:事業再構築実施企業と未実施企業の収益率比較】
出典:中小企業庁『中小企業白書 2024年版』よりKEYSTONE STRATEGY PARTNER整理
白書でも、再構築(=再配分)を選んだ企業は
収益率の中央値が高い傾向がある。
ここで重要なのは、
“攻めたこと”ではない。
“判断基準を決断したこと”である。
4|最初に失われるもの
撤退基準が曖昧な組織では、
・組織の集中力
・判断の一貫性
・現場の責任感
が先に低下する。
ある製造業では、
長年市場シェアを維持していた事業が、
粗利率未達状態で放置された。
改善前提で延命されていたため、
リソースが他部署に回せず、
結果として人材流出と価格競争力低下が起きた。
撤退まで5年を要した結果、
機会損失が累積した。
5|もう1つのケース:再設計からの再成長
あるサービス業では、
赤字事業を継続していたが、
• 3期連続の目標未達
• 明確な損失ラインの設定なし
• 社内で曖昧な議論が続いた
結果として撤退の決断が遅れた。
そこから経営判断基準を整え、
1)損失許容ライン
2)撤退タイミング
3)再投入可能条件
の3点を明文化した。
その結果、
・撤退が迅速になり
・残存事業への再投資が進み
・その後2期で利益構造が改善した
撤退は“失敗”ではなく
再成長への前提である。
6|最低限の撤退基準
図2:撤退基準の3要素(構造モデル)
出典:KEYSTONE STRATEGY PARTNER
撤退基準は、次の3つで十分である。
1)期限
2)損失許容ライン
3)再挑戦条件
これが明文化されていない場合、
撤退は空気で決まる。
それは経営ではない。
KEYSTONEの見解
撤退基準がないだけで
壊れるわけではない。
ただし、
判断の質は徐々に低下する。
撤退を設計できる会社だけが、
攻めを設計できる。




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